歯の矯正と言うと子供の内に実施するものというイメージがありますが、最近は大人(大学生や社会人)になってから矯正を始める人も多くなっています。
子供の頃の矯正はほとんど親が子供の歯並びを気にして矯正治療を子供にさせるのが通常です。しかし、大人の矯正の多くは、大人になって自分の意思でお金を貯めて矯正治療を行うのです。理由のほとんどは、鏡の中の自分の歯並びを気にして、笑顔がコンプレックスとなり、様々なきっかけを通じて治療に踏み切るパターンが多いのではないかと思います。例えば「好きな人の前で素敵な笑顔で居たい」「就職に向けて第一印象を良くしたい」「結婚式に向けて」とそのきっかけの理由は様々でしょう。笑うと目立ってしまう歯並びは、笑顔の印象すなわち第一印象を左右します。それが、本人にとっては、大金(自由診療)をかけてまで治療する決心をつけさせる、よほどのコンプレックスなのでしょう。
通常、人はコンプレックスを隠したいものです。つまりコンプレックスを無くすための治療も他人に隠したいものです。そこで、大人の歯列矯正には他人に分からないように「目立たない治療」の人気があります。ライフスタイルに合わせて様々な治療法が選択できるようになりました。そこで、従来よりも装置が小さくなって歯を効率的に動かし易くなった表側矯正や、歯の裏側に装置をつける舌側矯正(裏側矯正)、取り外しのできる透明なマウスピース矯正等があります。ご想像はつくと思いますが、目立たない矯正装置の方が料金が高額となります。
治療方法は、矯正装置が異なるものの、歯の動く仕組みは変わりませんので、子供の矯正とあまり変わりません。装置装着時には装置により異なりますが、通常3~4週間に1度位の通院となります。ブリッジによる負荷で歯の代謝で歯槽骨が移動して歯が動く(「歯が動く仕組みについて」参照)サイクルが3~4週になるのでそのサイクルに合わせてブリッジを調節して様子を見ます。矯正後の保定期間中や経過観察中は3ヶ月~半年の通院となります。保定期間とは、放っておくと歯が元の悪い位置に戻る「後戻り」現象が起こるので、取り外しのできる保定装置(リテーナー)で一定期間、歯の位置が安定するまで様子を見る期間です。
痛みについてですが、矯正治療で初めて矯正装置を入れた時に歯が動く準備をし始めるまで個人差はありますが、歯が浮くような違和感や噛むと痛い等の症状が現れます。個人差もありますが通常は2~3日、長くても1週間位で直ります。
このように大人の矯正は患者さんのライフスタイルに合わせた目立たない矯正装置を希望します。見た目のコンプレックスからの治療開始がほとんどですが、見た目のコンプレックスとなるほどの歯並びの悪さは、噛み合わせが悪いのです。噛み合わせが悪い状態で大人になるまで長年放置しておくと、頭痛や肩こり、腰痛、膝痛等全身の色々な所に影響が現れているはずです。しかしその原因が歯並びの悪さから来る噛み合わせが原因だという事は一般の人にほとんど知られていません。故に、見た目の悪さから大人になって矯正治療をした人は、自信たっぷりの笑顔だけでなく、治療の副産物として全身の様々な痛みからも解放されるわけです。